教育ICTデザイナー  田中康平のブログ

教育ICT環境デザイン、ICT支援員、幼児教育とICT、など

「ICT も 活用する学習者の姿。”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)」から考える。〜日本の学校における教育の情報化で不足していること(2)〜

「ICT も 活用する学習者の姿。”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)」から考える。

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(画像:2018年現在使用している研修資料より)

 

1人一台の学習用端末や周辺のシステムなどを導入したとして

(1)授業がどのように変わること(改善)を想定して、機器やソフト等を整備しているのか?

(2)「授業改善(改善を伴う授業デザイン)」の結果、学習過程にどのような変化がもたらされることを想定・期待しているのか?

(3)学習過程が変化し、より充実するためには、ICT環境の他に何が必要になるのか?

 私が、1人一台環境に関わるようになって今日に至るまでの約7年の間に考えてきたこと、見出したこと、現在取り組んでいることなどについて書いていきます。

少々長いですが、お付き合いください。

 

[目次]

・ 使いやすければ使われる。けれど、、、

・1人一台の学習者用端末

・Bloom's Taxonomy(ブルームの教育目標分類学) 

・改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)

・「ICT も 活用する学習者の姿。”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)」

 ーーー

 ・使いやすければ使われる。けれど、、、

私自身、日本の学校における「教育の情報化」に関連する仕事に就き、20年近くが経とうとしています。

PC室、校内LAN(有線/無線)、グループウェア、校務支援システム、電子黒板、学習者用端末(1人1台など)、授業支援システム、LMS、教育イントラ、学校HP、ICT支援員、プログラミング教育、教員研修、コンサルティング業、教育情報セキュリティ監査、など、

教育現場のICT環境の整備や活用支援に関する仕事を通して、様々な「課題」に直面してきました。

代表的なものは、「整備しても使われない」という「課題」です。

これに対して、有力な解決策の一つとして、

「使いやすい環境の整備(使いやすさの追求)」

を提案してきました。

(端的に言えば、売り手の理屈に振り回されず、ユーザー主体の機器やシステムを選定し、学習活動を阻害しないシンプルな環境を構築する、ということです。)

その甲斐もあり、幾つかの学校では、以前よりもはるかに「使いやすいICT環境」(無線LANを含む校内ネットワーク、大型提示装置、教員用端末、学習者用端末など)が整備されました。

そこでは、教員や児童生徒が大型提示装置(電子黒板やプロジェクターなど)やタブレット端末などを活用する機会が増え、それらが使われずに埃をかぶるケースは減少しました。

ICT環境が日常的に活用されるようになりました。

「整備しても使われない」というこれまでの代表的な課題は、どうやら解決したように見えました。

整備して1年、2年と経つにつれて、幾つかのことが見えてきました。

<一斉指導が効率よく行えるようになった>

プロジェクターなど、使いやすい大型提示装置と教員用のタブレット端末などが常設されると、これまで板書していた内容をスライドにして提示したり、教科書や児童生徒のノートをタブレット端末で写真に撮り提示したり、教える側が見せたい情報を提示しやすくなりました。

<学習者端末の画面を教員側で確認しやすくなった>

授業支援システムを活用し、教員用端末から学習者用端末へ教材を配信したり、学習者側端末の画面を教員用タブレット端末で受信する光景を目にする機会が増えました。

<写真や動画を撮影し、その場で共用しやすくなった>

児童生徒が、タブレット端末を使い、自分たちの活動の様子や成果物などを、写真や動画を撮る機会が増えました。それらを互いに見せ合いながら、思考する場面も増えました。

タブレット端末だけでは難しそうなこと、がわかってきた>

写真や動画を撮る、タブレット端末の画面上に手書きする、教員用端末の送信する、などの活用は増えるのですが、それだけでは難しいことも見えてきました。

・タイピングスキルの習得

・新聞作成など、ある程度の文字数からなる文章を入力し構成する

・複数のWebページを比較しながら情報を収集し比較する 

など。文部科学省が実施した「情報活用能力調査」で指摘された課題と同じような傾向が現場でも見えてきました。

情報活用能力調査|学校教育分野|教育の情報化

jouhouka.mext.go.jp

今から4年ほど前にこのブログ内で書いた記事で、その当時見てきたことをまとめています。参考までにリンクを貼っておきます。

tanakou64nelm.hatenablog.com

 

ICT環境が活用はされているのですが、何かモヤモヤしたものが頭の中から消えません。

 

「学習者が、教員が話す内容を一方的に聞くだけ」という姿だけではなく

「学習者自身が活動する」という機会は増えたと思います。

(ただし、ICT環境の影響だけではなく、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れたことによる変化も含まれています。)

同時に「活動あって学びなし」という姿を見ることもありました。

「使いやすいICT環境」、特に学習者用端末が整備されたとして、

「提示しやすい=一斉指導が効率よくなる」

「学習者の画面を確認しやすい」

「写真や動画を共用しやすい」

ということで、提供される知識(情報)の量は増えやすくなります。

が、しかし

記憶することに対して有効な「手立て」としてICT環境が機能し、「知識を記憶できたか?」に力点が置かれているとしたら、それは従来の授業とどう違うのだろうか?

知識(情報)を活用・応用できているだろうか?

「使いやすいICT環境」だけで、知識(情報)の活用・応用まで自然と進むわけではなく、その他に必要なコトの検討ができていなかったのではないか?

ICTの活用が定着するにつれ、知識伝達型の授業が強化される傾向が見られる場合もありました。

目指すべき到達点と、必要な要素の整理が不足していたのだ。ということに気がつきました。(お恥ずかしい話ですが。)

 

到達点の整理が弱いと、現状を評価したり、その過程で生じる課題の要因を見出したり、解決する方策の検討が難しくなります。

「ICT環境の整備」が目的化してしまった地域や学校では、「思うように活動できない」という課題を目の当たりにしてきました。(佐賀県教育庁のICT利活用教育推進に関する事業改善委員として、特に痛感しています。)

整備が目的ではなく、整備した先の「授業改善」など目的の「整理」が重要です。

※このことは、2年前のブログに書いています。

tanakou64nelm.hatenablog.com

「お買い物」した後に「どう活用しようかしら?」など、おかしな話ですよね。

活用しやすいICT環境の整備によって、活用が進む。

確かにそうなのですが、、その先で

(1)授業がどのように変わること(改善)を想定して、機器やソフト等を整備しているのか?

(2)「授業改善(改善を伴う授業デザイン)」の結果、学習過程にどのような変化がもたらされることを想定・期待しているのか?

(3)学習過程が変化し、より充実するためには、ICT環境の他に何が必要になるのか?

 という3つの問いが、私の頭の中に浮かびあがりました。

ここから、既存の学校というフレームの中で提案できることを模索することになります。 

 

・1人一台の学習者用端末

2010年 iPadが発売されました。

日本だけでなく海外の学校でも、iPadの教育利用が注目され、学習者用端末として導入するケースが増えていきました。

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日本では総務省による「フューチャースクール推進事業」がスタートします。

小学校、中学校、特別支援学校における、1人1台の学習者用端末を活用する取り組みです。

採択された地域によって活用する端末のOSや筐体は異なります。(iPadの学校もあれば、Windowsの学校もありました。)

当時は

「1人一台によって学びが変わる!」

という期待感がとても高く、実証校の公開授業に行けば多くの関係者(教育関係者だけではなく、企業や議員の方なども)が集まり、今(2018年現在)よりも熱気と活気が溢れていたように記憶しています。

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先生が、子供たちが、いつでもICT機器やソフトを活用できる環境のもとで、企業のサポートも受けながら、様々な試行錯誤がなされました。

事業終了後。

すべての採択地域において1人一台の効果が認知され、他校にも同様のICT環境が整備された、というわけではありません。

むしろ、他校に展開できないまま。という地域の方が多かったのではないでしょうか。

もちろん予算の課題もありますが、期待していた効果が見出せなかった、という地域もあったのだろうと思います。

 

当時、海外でも、1人一台環境を整備して学習を変革しようとしている国や学区(教育委員会)、学校が増えている、ということを聞いていました。

実際に現地に行かれている研究者の先生から、機会を見つけてはその様子を教えていただきました。このころ、「日本の学校と海外の学校の違い」を意識し始めるようになりました。

 

〜日本の学校の事例より〜

・全員が同じメーカーの同じ機種(当然同じOS)の端末を活用している。

・先生の指示によって活用することが多い。(学習規律を大切にし、机の上での端末の置き場所、活用場面、方法を指示・指定しながら指導することも珍しくない。)

・授業支援システムで児童生徒の端末の画面を電子黒板等に集約して確認するなど、学校にのみ存在する特別なシステムが導入されている。

・小学生、中学生にメールアドレスは付与されていない。(先生個々にすら付与されていない地域も存在する。)

 ・Webでの発信は、そう多くない。SNSの利用は行われていない場合が多い。(使わせない方向で指導する傾向もある。)

 

〜北欧や豪州など海外の学校の事例より〜

・完全なBYOD(Bring Your Own Device)を実施している学校や学区もある。
推奨する複数のOSやスペック基準が例示され、学校に持ち込まれる端末のメーカーや機種、OSは異なる。

・学習用端末をいつ使うか、学習者自身が必要に応じて判断していることが多い。

・「G Suite for Education」、「Office 365」 など、一般に活用されているソフトなどが中心。

・小学生でも、メールアドレスを付与している。

・Webでの発信や、SNSの利用も行われている。学校向けのWebサービスやデジタル教材が豊富。

 

などを聞くたびに、「隣の芝生青い」という感覚を持ちました。

同時に「なぜこうも違うのだろう?」ということを考えることになりました。

 

・Bloom's Taxonomy(ブルームの教育目標分類学) 

フューチャースクール以降、1人一台の学習用端末の整備や活用支援に関わることが増え、冒頭に書いたような「課題」に直面し、その解決策を模索する中で、使いやすいICT環境の整備を提案しつつ

(1)授業がどのように変わること(改善)を想定して、機器やソフト等を整備しているのか?

(2)「授業改善(改善を伴う授業デザイン)」の結果、学習過程にどのような変化がもたらされることを想定・期待しているのか?

(3)学習過程が変化し、より充実するためには、ICT環境の他に何が必要になるのか?

 という3つの問いについて、解決の糸口を探し続けていました。

ある時、北欧や豪州の学校に視察に行かれている先生から

「海外で1人一台環境を実現している地域や学校の関係者は、〇〇の活動はブルームのタキソノミー的に考えると〇〇の段階にあたる。ということを口にすることが多いが、日本でそのようなことを聞く機会がほとんどない。」

という話を聞きました。

 早速、ブルームのタキソノミー(Bloom's Taxonomy) について文献を探し、自分なりに解釈する作業を始めました。

 

「ブルームの教育目標分類学(Bloom's Taxonomy)」

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(画像:2016年に使用していた研修資料より)

アメリカ心理学会:1948年 大学試験問題の分類に着手し、8年後に取りまとめられたものです。
認知・情意・精神運動領域に分け、それぞれに応じたレベルが提案されています。

例:認知的領域 1.0 知識 2.0 理解 3.0 応用 4.0 分析 5.0 統合 6.0 評価
1.0を出発地点として、より高いレベルの試験問題の作成を目指しています。

”この試みを開始した背景には、1948年当時に問題視されていた「機械的暗記型・言語主義的教育」があった。
「知識」が与えられたことをそのまま繰り返すレベル(いわゆる丸暗記)であるのに対し、「理解」レベルになると頭で考えて、変形(表現を変えて自分の言葉で答える)、解釈(与えられた情報間の関係を答える)、あるいは外挿(示されていない内容を予想して答える)などを求める問題が出される。「知識」を学ぶことの重要性は認めた上で、そのレベルのみで試験を終始させてはいけない。試験問題を上のレベルで作成することを意識することによって、教育のゴールをより高いレベルに設定することができる、というメッセージが込められていた(50年も経った今日でもその重要性は変わらない)。”引用元:熊本大学_基盤的教育論_学習指導評価論_学習目標の分類と適正処遇相互作用_ブルームのタキソノミー

アメリカでは、1948年当時すでに、暗記型教育への問題意識があり、理解→応用→分析→統合→評価という高次の思考へ向かうことの試みが始まっていたことに驚きました。同時に、この考え方はアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善(授業デザイン)にとって有効ではないのか、という期待を抱きました。

基本的な内容は分かってきました。

しかし、教育現場で、特に1人一台のようなICT環境を前提とした授業や学習活動をデザインする際に「ブルームの教育目標分類学(Bloom's Taxonomy)」を上手く活用する術が見出せないまま、関連する書籍や論文を探しては読むを繰り返していきました。

そのうちに、「ブルームの教育目標分類学(Bloom's Taxonomy)」は、2001年に改訂版が発表されていることを知り、文献の収集と読解を進めていきました。

 

・改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)

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(画像:2018年現在使用している研修資料より)

1990年代、ブルーム門下生だった、ローラン・アンダーソンとD・クラースウォールは「ブルームのタキソノミー(Bloom's Taxonomy)」を改訂し、2001年に「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」を発表します。
改訂のポイントは、それぞれのカテゴリの再編と、各カテゴリに関連する動詞を使用していることです。

 

カテゴリの再編は、このような形になっています。

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左がオリジナル。右が改訂版のカテゴリです。

 

また、縦横のマトリクスで構成された「タキソノミー・テーブル」が示されています。

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横軸は「6段階の認知過程次元」

1 記憶(想起)→ 2 理解 → 3 応用 → 4 分析 → 5 評価 → 6 創造

LOTS:Lower Order Thinking Skills(低次の認知・思考スキル)

から

HOTS:Higher Order Thinking Skills(高次の認知・思考スキル)

に向かうように配置されてます。

それぞれについて、もう少し説明すると、次のような内容になります。

ーーーーー

1 Remembering (記憶する)

事実(単体の知識や情報)などをリスト化する、暗唱する、検索するために想起が働くなど、記憶に関連すること

2 Understanding(理解する)

様々な種類の機能(叙述や図示や例示など)を働かせ、意味を構成すること

3 Applying 応用する(適用する)

学んだ教材が、図、モデル、インタビュー、シミュレーション、プレゼンテーションなどで使用される状況

4 Analyzing(分析する)

素材を要素に分割し、要素の相互関係や全体の構造や目的を判断すること

5 Evaluating(評価する)

基準(規準)に基づいて審査し、批判し、改善すること

6 Creating(創造する)

要素をまとめ、機能的な体系を形成や設計すること
要素を計画または作成し、新しい構造またはパターンに再構成すること

ーーーーー

縦軸は「4つの知識次元」

A 事実的知識 B 概念的知識 C 手続き的知識 D メタ認知的知識

各項目とサブカテゴリーは、次のような内容です。

ーーーーー

A Factual Knowledge(事実的知識)

学習者が問題を解決するために知っておく必要がある基本要素
 Aa 用語の知識
 Ab 具体的な詳細と要素の知識

B Conceptual Knowledge(概念的知識)

より大きな構造内の基本要素の相互関係
 Ba 分類とカテゴリーの知識
 Bb 原則と一般化の知識
 Bc 理論、モデル、および構造

C Procedural Knowledge(手続き的知識)

何かを実行する方法(質問の方法、技能、アルゴリズム、技法など)や、方法を使用するための基準。
 Ca 特有のスキル、アルゴリズム
 Cb 主題に特化した技術の知識、メソッド
 Cc いつ決定するかについての知識、適切な手順を使用する

D Metacognitive Knowledge(メタ認知的知識)

自分の認知など特定の認知プロセスの認識に関連する部分。A,B,Cの各知識を認知した状況や条件、問題や認知課題を解決する方法についての知識。
 Da 戦略的知識
 Db 適切な文脈および条件付き知識を含む、認知課題に関する知識
 Dc 自己知識

ーーーーー
参考文献:A Revision of Bloom’s Taxonomy: An Overview. David R. Krathwohl

この「タキソノミー・テーブル」というマトリクスは、学習過程の変化を検討し、設計(デザイン)する際の目安として機能します。 

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(画像:2018年現在使用している研修資料より ※改訂版タキソノミーの解説用)

 

 この頃、中央教育審議会で次期学習指導要領の議論が進められていました。「改訂版タキソノミー」が、参考となる考えの一つとして示されていました。これからの日本の教育現場に関わる身であれば知っておくべき内容だと感じました。

平成29年3月に公示された新学習指導要領の総則と読むと、

「第3 教育課程の実施と学習評価  1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」に書かれている部分などは、「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」の考えを参考にしながら取りまとめられた部分が、色濃く残っていることがわかります。

単元 (新設) や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。
特に、各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を発揮させたりして、 学習の対象となる物事を捉え思考することにより、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)が鍛えられていくことに留意し、児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習の充実を図ること。
 私が実施している「ICT×学習デザイン」研修では、下の図を提示して、学習指導要領が目指す部分との関連について説明しています。

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(画像:2018年現在使用している研修資料より ※新学習指導要領の内容をもとに構成)

 

「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」のポイントは、それぞれのカテゴリの再編と、各カテゴリに関連する”動詞”を使用していることです。

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1 Remembering (記憶する)
認識する(識別)
想起する(検索 ※ネット検索ではなく、記憶の中を対象とした検索)

2 Understanding(理解する)
解釈する(明確化、言い換え、置き換え、翻訳)
例示する(図解、実例)
分類する(分類、含む)
要約する(抽象化、一般化)
推論する(結論、外挿、補間、予測)
比較する(対照、マッピング、マッチング)
説明する(モデルの構築)

3 Applying 応用する(適用する)
実行する(実行)
実装する(使用)

4 Analyzing(分析する)
差別化する(違いがわかる、分別、フォーカス、選択)
整理する(一貫性、統合、アウトライン、解析、構造化)
帰属(解体)

5 Evaluating(評価する)
点検/照合する(コーディネート、検出、モニタリング、テスト)
批評する(審査)

6 Creating(創造する)
生成する(仮説)
プランニング(設計)
生産する(構築)

このような”動詞”が提案されています。
 

新学習指導要領が示す「主体的・対話的で深い学びからの授業改善」「過程の重視した学習の充実を図る」という部分を考えた時、

児童生徒の主体的な学習活動を”動詞”からイメージし、学習過程の変化を想像したり、それを促す授業をデザインする。
ということは、非常に理にかなっているのではないか、と考えました。

 

「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」で示されたタキソノミー・テーブルや動詞を活用することで、

(1)授業がどのように変わること(改善)を想定して、機器やソフト等を整備しているのか?

(2)「授業改善(改善を伴う授業デザイン)」の結果、学習過程にどのような変化がもたらされることを想定・期待しているのか?

(3)学習過程が変化し、より充実するためには、ICT環境の他に何が必要になるのか?

という3つの問いに光が差してきたように感じました。

 

・ICT も 活用する学習者の姿。”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)

「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」を知り、その中身を理解するにつれ、「自分で”応用”してみたい」と考えるようになりました。

改訂版タキソノミー的に言えば「3 Applying 応用」の段階です。

まずは、自分が運営している民間のICTスクールのカリキュラムデザインへの応用を試みました。

子供たちが活動する姿から見える”動詞”をベースに、カリキュラムの展開を考えていきました。

指導する時は、「6つの認知次元のどこに到達しているだろうか」という視点で子供たちの活動を観察するようにしました。

すると、一見ふざけているような子供の姿の中に、認知や思考に向かおうとしている動きが潜んでいることを”みとる”ことができるようになってきました。(形成的評価への入り口)

到達速度や過程の違いに気がつき、これを認め、個々に調整するための声かけや支援を行っていきました。(個々への対応と即時フィードバック)

子供たちの関心と課題が近い時ほど、高次の思考が働きやすくなることが分かってきました。(学習意欲と課題設定)

子供たちが、タブレット端末やPCの基本を理解し、自ら応用し、良し悪しを分析し、評価するなどを繰り返しながら、オリジナルな手法や作品を創造する。

こうした流れを、指導者側がクリアにイメージすることができるようになりました。

そうなると、カリキュラムの課題も見つかり、改善しやすくなりました。

 

次に、授業改善と学習過程の変化を促し、より高次元の思考へ向かう授業をデザインするための「教員研修」への応用を試みました。

 学校や教育委員会からは「ICT活用」をテーマとした教員研修を依頼されるのですが、「ICTを効果的に活用するために、学習目標から考える」というテーマで実施するように、研修の内容を転換していきました。

実際に幾つかの学校や教育委員会で研修を進めていったのですが「ICT活用」という部分との関連を整理する場合に、もう少し考えやすい方法の必要性を感じました。

「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」に関する文献は、国内のものが非常に少ないのですが、海外の論文やHP、ブログ記事などは多種多様に存在します。

それらの中から「ICT活用」を検討する場合のヒントを探していきました。

 

 

という文字が目にとまりました。

「改訂版タキソノミー(Bloom's Revised Taxonomy)」で提案されていた”動詞”に、デジタルを活用した場合の”動詞”が加え、具体的な場面についても記載されています。

「これだ!」

と思いました。

調べていくと、Digital Taxonomyをベースに、様々に表現されたツールがあることが分かりました。

iOSアプリ、Androidアプリと対応した図表もあります。

ポスターとして職員室などに掲示することを想定して公開されているものもあります。

今回は、その中の一つ「 Bloom’s Digital Taxonomy Verbs Poster」をピックアップしてみましょう。(リンク先からダウンロード可能です)

globaldigitalcitizen.org

日本語に訳してみました。

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よく見ると、カテゴリーをまたいで重複している”動詞”が存在します。

おそらく、学習過程の文脈などから解釈すべき内容なのでしょう。

国内の学校における、1人一台の学習者用端末などICTを活用した授業デザインに活用できる部分と、もう少し考慮が必要な部分がありそうです。

6つの認知次元カテゴリーとともに、いくつかを見ていきましょう。

1 Remembering (記憶する)

 Bookmarking ブックマークする

 Copying コピーする

 Googling インターネットで検索する

 Reciting 暗唱する

 Recording 録音する

 Visualizing 視覚化する

ブックマーク、コピーなどは最も下位の思考ということでしょう。板書を写すだけのノート書きは、これらとどう異なるのか、捉え直すヒントになるかもしれません。

暗唱も記憶のための行動とされています。

Googleで検索することが、記憶を想起させる行動として捉えられているようです。

視覚化は、記憶を補助する行為として示されています。視覚化を目的としたタブレット端末の活用(写真を撮りマーキングするなど)は、「記憶」の段階だと見ることができそうです。

その先に進むには、どういう行動(活動)を関連させると良いのか?

Digital Taxonomy Verbsの活用は、そうした考察も助けてくれそうです。

2 Understanding(理解する)

 Boolean search ブール検索(AND/ORなど複数の語句を利用した検索)

 Clasifying 分類する

 Comparing 比較する

 Journalling 日誌にまとめる

 Tagging タグ付けする

 Tweeting ツイートする

単語のみの検索ではなく、語句の組み合わせによる検索は理解を促す行為とされています。

比較・分類も理解の段階に含まれています。応用への足場を作る行為と考えることができそうです。

日誌を書くことで、学習を振り返ることも、確かな理解を促すための行動とされています。

タグ付けする(印をつける)ということも、理解を助ける行為。

ツイッターでつぶやくことは「140文字以内で要約する」ということも含め、記憶よりも高次の思考を伴う行為、理解を促すものとされています。

3 Applying 応用する(適用する)

 Changing 変化させる

 Charting 図やグラフ化する

 Computing コンピューティング

 Examining 試験する

 Implementing 実装する

 Presenting プレゼンテーションする

理解した内容や素材などを変化させることは、応用段階に含まれています。

図やグラフ化する行為も、知識や理解してきた内容を活用(応用)していると考えることができます。

コンピュータを活用することが含まれています。

試験する、実装することも、応用段階として示されています。

プレゼンテーションする。

理解した内容や素材をもとに、コンピュータを活用し図やグラフ化の手法を用いながら、実装のための提案などができると良いのではないでようか。

4 Analyzing(分析する)

 Categorizing カテゴリーを分ける

 Contrasting 対象と比較する

 Mind mapping マインドマップ化する

 Pointing out 指摘する

 Prioritizing 優先順位をつける

 Surveying 測定する・調査する

素材を要素に分割する際に、カテゴリー分けしたり、対象と比較することが、分析段階に含まれています。

マインドマップの活用も分析段階とされています。

指摘したり、優先順位をつける、測定や調査なども分析に含まれています。

5 Evaluating(評価する)

 Assessing 査定する(アセスメント)

 Commenting コメントする

 Editorializing 編集する

 Reviewing 推敲する(レビューする)

 Revising 改訂する

 Supporting サポートする

基準(規準)に基づき審査する「査定」は、評価に含まれています。

コメントする、編集する、推敲する、など論述などに関連する行為も、評価という高次元の思考を伴うという認識のようです。

改訂は、その元となる素材の理解や分析がなければできません。

サポートするという行為も評価段階だと捉えられています。

その他、評価段階のいくつかの”動詞”からは、教師の役割に関連する内容が見えてくるようです。

学習者がこの段階に到達できるということは、教師のように教えるレベルに達しつつある、と見ることもできるのではないでしょうか。

6 Creating(創造する)

 Animating アニメーションを製作する

 Blogging ブログを書く

 Collaborating コラボレーションする

 Designing デザイン(設計)する

 Programming プログラミング

 Writing 執筆する・論述する

アニメーション制作には様々な過程(知識や技能、それらの統合)が必要です。「創造的行為」と捉えられています。

ブログを書くということも、最も高次の思考を必要とする行為だとされています。私もこのようなブログを書くには、様々なことを調べ、要約し、推敲し、書き換えるなどを経ていますし、公開することで多方面からの意見をもらい、自己の主張を客観視したりブラッシュアップすることに繋げています。学習効果は非常に高いと思っています。

コラボレーション。他のものと組み合わせることで別の価値創出をねらう行為、と考えることができるのではないでしょうか。

デザインする。例えば、授業をデザインする、学習活動や単元をデザインする、学習環境をデザインする、などは最も高いレベルに含まれる、創造的な行為だと考えて良いでしょう。

今話題の「プログラミング」という”動詞”は、6 Creating(創造する)のカテゴリーに分類されています。それだけ高次の思考を伴う行為だと認識されているようです。

執筆する・論述するということは、ブログを書くことに通じた部分がありますが、編集者からの指摘や査読を経て世に出される文章をかくことは、創造的な行為だとされています。

 

少し遡りますが

「”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)」を知ることで、

「日本の学校」と「北欧や豪州など海外の学校」との違いについて理解ができたように思いました。

また、

〜北欧や豪州など海外の学校の事例より〜

・完全なBYOD(Bring Your Own Device)を実施している学校や学区もある。
推奨する複数のOSやスペック基準が例示され、学校に持ち込まれる端末のメーカーや機種、OSは異なる。

・学習用端末をいつ使うか、学習者自身が必要に応じて判断していることが多い。

・「G Suite for Education」、「Office 365」 など、一般に活用されているソフトなどが中心。

・小学生でも、メールアドレスを付与している。

・Webでの発信や、SNSの利用も行われている。学校向けのWebサービスやデジタル教材が豊富。

ということの背景が理解できたように思いました。

 

「”動詞”(Digital Taxonomy Verbs)」を活用することで、

ICT も 活用する学習者の姿から見える”動詞”の連なりをイメージし、学習過程の変化を想定したり、変化を促すために必要なモノを見出すことができそうです

活用するICT機器やソフト、その他の環境など、整備の前に整理を進めるためのモノサシとして機能するかもしれません。

 

2018年、私はDigital Taxonomy Verbsを活用した教員研修「ICT×学習デザイン」を提案し実施しています。

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参加される先生には「学習目標の検討と評価規準の整理+ICT活用」を含めた「単元デザイン」にトライしていただきます。

最初の段階で、これまで「記憶・理解」中心の授業が多かったことに気づいていきます。

そこから応用や分析・評価に向かうための具体的な方策の検討を進めていきます。

学校全体で取り組むことで、教科内での規準の共有、他教科との意見交換や、授業後の省察や改善を支援することが可能になります。

複雑なICT活用や、学校特有のシステムの活用ではなく、

写真を撮る、動画を撮る、文章を書く、共有する、というシンプルなICT活用から、高い次元の思考へ向かうための環境や機能の検討ができるようになります。

ブログでの発信やプログラミングなどが、最も高次の「創造する」段階であるという認識を共有し、これまで馴染みがなかったアウトプットの方法について価値を見出し、学習活動に取り入れる方策を検討することが可能になります。

”動詞”の整理を踏まえて、学習者が見せる姿を観察する「目(形成定期評価の規準)」をクリアにすることで、”みとり”の充実を図ることができます。

その結果、形成的評価によるフィードバックや個別対応、ファシリテーション技術の向上が見込めますし、

主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、過程を重視した学習の充実、に寄与できるだろうと期待しています。

 

(1)授業がどのように変わること(改善)を想定して、機器やソフト等を整備しているのか?

(2)「授業改善(改善を伴う授業デザイン)」の結果、学習過程にどのような変化がもたらされることを想定・期待しているのか?

(3)学習過程が変化し、より充実するためには、ICT環境の他に何が必要になるのか?

私には、それぞれの答えが見え始めてきました。

と言いつつ、また新たな課題が見つかる気もしています。

皆様はいかがでしょうか。