教師がICTを活用するということ(前編)
「教師がICTを活用するということ」(前編)
「教育の情報化」「教育におけるICT活用」
について考える中で、幾つかのキーワードが浮かんできます。
「電子黒板」
「デジタル教科書(指導者用)」
「タブレット端末」
「無線LAN」
「協働的な学習」
これらについて、日頃気になっていることを書いてみます。
「電子黒板(液晶等のパネル型)」
・70インチでも小さく感じる。(16:9の表示やPCの高解像度化による。)
・操作ボタンが視界に入る。学習者から見ると不要な情報である。
・学習者の視点を「従来の黒板」⇄「電子黒板」と行き来させている。
・高さ不足の場合、後方の学習者は、前方の学習者の頭部に遮られ、見えていない。
「電子黒板(プロジェクタ型 スタンド式)」
・大きく投影できる。しかし教室内の設置場所に困る。
・長年使っているうちに、プロジェクタの自重により位置がズレてくる。
結果、投影面に歪みが生じ、補正メンテナンスが必要になる場合がある。
・操作ボタン、高さ不足については、パネル型と同様。
どちらにも言えることとして、
・学習者は「大きく光る画面」に対して無意識に反応する場合がある。
「見せる必要がない場合の対処」「見せないという見せ方」
も考えなければならない。
「デジタル教科書(指導者用)」
・ツールが豊富。利用者に「慣れや習熟」を求める。
・表示している教科書の内容以外の情報が多い。
結果、教科書の内容が小さく投影されることがある。
・教員の操作と、指導するための振る舞いは違う。
学習者の思考を惑わす場合がある。
・整備率と学力向上との相関性は、現時点では見られないようだ。
(今後、調査を進めると、明らかになるかもしれない)
※参考資料「デジタル教科書の整備状況と学力調査都道府県別結果の考察図」
「タブレット端末」
・OS、キーボードの有無等の違いにより様々。一括りには語れない。
・起動又は認証処理やソフトの更新等に時間を要すと、学習活動の時間が少なくなる。
・オフラインでの活用が可能な設定、OS、が望ましい。
・とにかく、写真や動画を撮る。その保存分類が一番の課題。
・落とす。壊れる。こういうことは「必ず起きる事」として考えておく。
「無線LAN」
・教室に41台の端末が存在し、かつ複数の教室で稼働している場合、全ての端末が無線LAN接続を維持し続けることは極めて難しい。
・「無線LANが接続できない→無線LANアクセスポイントが悪い」ではない。
原因は、使用している端末やソフト、システム側にある場合も多い。
これを解明するのは容易ではない。
・無線LANでのやり取りが前提のシステムを活用した授業では、やり取りの手間や通信障害等で授業進行が遅くなるケースがある。
・そもそも、通信し続けなければならない活用方法やソフト、システムが必要か?
ここを見直す必要がある。
・有線LAN、HDMI等、「有線ケーブルの利用も可能な環境が必要」となる場合がある。
「協働的な学習」
・従来から行われていた「ペア学習」「グループ学習」との違いは?
・タブレット端末を活用し、個々の意見を電子黒板等に集約して議論する。
個々の意見を小さなホワイトボード等に書き、黒板に貼り並べて議論する。
学習効果にどのような違いがあるだろうか?
・協働的な学習を促進するのは、「ICT環境」「教師による動機付け、働きかけ」
どちらが必要か?片方だけでも良いか?その両方が必要か?
私が学校現場に行き、ICTを活用した授業をサポートする、観る、先生方と話す中で感じてきたことです。
この他にも様々な事が指摘されるかもしれません。
「なるほど、こういう活用は、この活動では有効だ」
と感じることあります。
一方で
「この活動では、ICT環境が邪魔をしている」
「オフラインの方が早い」
「思考のスピードの方が勝っている」
と感じることもあります。
どちらかというと、後者の方が多い。
現場では、先生方からこう聞かれます
「効果的な活用法を教えて欲しい」
「ここぞ!というときに使いたい。そういう事例を知らないか?」
この様な質問の裏側には、
「思うような(言われるような)活用ができない」
「学習効果に結びつく実感がない」
「自分たち(利用者)の手に馴染んでいない」
という課題が考えられます。
この課題を解決するためには、
学習者用のタブレット端末や
授業全体に影響を与えるような大掛かりなICT環境ではなく、
「教師がICTを活用するということ」
に絞って整理し、
「必要なコト、必要なモノ」
を考えていくべきだろうと考えています。
その際に参考となる実践が始まっています。
ここから先は、実際の事例をもとに考察していきます。
(後編へつづく)