教育ICTデザイナー  田中康平のブログ

教育ICT環境デザイン、ICT支援員、幼児教育とICT、など

9教授事象×ICT×(反転型)

「9教授事象×ICT×(反転型)」

全小学校で反転型授業を取り入れた自治体

公開授業にお邪魔してきました。

旧知の先生も多く、世間話に花を咲かせながら授業参観

動画コンテンツを家庭で視聴し

ワークシートやe-Learningで予習

そこから本時の授業に望みます。

昨日ブログにアップした、

ガニェの9教授事象×ICTを元に

授業の流れに着目してみました。

 

驚いたのは、導入の短さ。

わずか3分で終了!

LMSにより、レジネスの把握は簡易に短時間で済んだそうです。

加えて、本時で扱う「新しい事項の提示」まで導入で終わらせています。

これは、

動画視聴=家庭学習とLMSの成せる部分でしょう。

 

その後、展開に移ります。

課題に対して、グループでの恊働

その後、全体での恊働

30分、しっかり時間を使います。

まとめは12分程度。

昨日の図を改めると、こういうカタチでしょうか

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客観的に見ても驚きます。

授業デザインとしては、ICTによる効率化と深化を期待したいところです。

 

しかし、、、

 

違和感を感じました。

恊働の時間はしっかり確保出来ました。

発問にも問題は見られません。

授業者はファシリテーションに徹しています。

決して授業力が低いとは思えない、よい流れです。

なぜか議論が活性化しないのです。

 

公開授業という環境で緊張している?

いいえ、ここは実証校。子どもたちは4年生の頃から公開慣れしています。

思春期特有の空気?

休み時間の活動を見る限り、そうとは思えません。

 

なぜでしょうか。

 

個別と恊働を行き交う複雑な思考と活発な活動が見えてきません。

なにか、発露できない雰囲気。

個で思考して事足りているような面持ち。

その原因はどこにあるのか?

 

動画コンテンツの内容はどうだったのか?

教科書に沿った内容。

本時の課題に対する考え方や解を導く流れを把握する内容です。

その上で、授業に望む。

 

想像するに、、、

子どもたちにとって、恊働してまで解決したくなるほどの課題で無くなってしまっていたのでは?

 

そう思うと、納得出来る気がします。

わざわざ話し合わなくても、答えはだいたい分かっている。

皆、同じ動画を見て家庭学習を終えて臨んでいるので、考え方の違いが少ない。

あえて違う答え、違う考えを出す方が難しそう。

まとめの発表で「何か意見や考えはありませんか?」

との問いに対する低調な反応がその事を物語っているように思えてなりません。

「答えを見いだした、発見した時の喜び」

そういう、「熱」みたいなものが感じられない気がしたのは私だけでしょうか。

 

反転型学習を通して

「問題解決能力の育成」

を主題に掲げるのであれば

授業デザインの中で

「動画コンテンツの構成」

ここが授業の流れを決めてしまうように見えました。

 

展開時間が確保出来る事は、大きなメリットだと思います。

その中で

「思考と認知の深まりを楽しむ授業」=「活発な恊働」

に持っていくには

「教材研究」「授業デザイン」

そしてなにより

「授業力」

これが問われるのだと

改めて感じた一日でした。

 

もう1つ

「教材研究」「授業デザイン」

の時間確保はただでさえ難しいので

足し算だけではなく

トレードオフでの事業全体のマネジメント

学校経営を期待したいところです。 

9教授事象×ICT

「9教授事象×ICT」

授業設計、授業デザイン

いわゆる

ID = Instructional Design

について勉強されている方であれば

ロバート・ガニェの9教授事象は重々ご存知だと思います。

 

学校へICT機器やシステムを導入する場合の入口をどこに置いていますか?

凄い製品が出た! このシステムを使いたい!

という動機からスタートしていませんか?

 

「授業とは?」

「授業設計・授業デザインとは?」

これを入口に、教育ICT環境をデザインする。

ここから考えてみたいと思います。

 

まず、

「単元目標」「本時のめあて」

「そこへ到達する為のICT活用」

が整理されている事が重要です。

進行上必要なければ

「ICTツールを使わない!」

という選択も大いにあり得るわけです。

ここでは、到達手段としてICTツールの活用を選択した場合を想定してみます。

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これは、小学校の45分授業の時間配分を9教授事象に落とし込み

各場面でどのようなICTツールが活用されるか?を当てはめた図です。
(あくまでも1つの例です)

ICTツールは、授業者や学習者の活動を助ける道具であって欲しい

学習の妨げになってはなりません。

その為には、

「すぐに使える」「だれでも使える」

これが必要条件になります。

この観点から端末(OS)の選択、大型提示装置の機能、ネットワーク活用の有無など考慮したICT環境をデザインしていきます。

 

授業の流れに寄り添うICT環境デザイン

私のプランでは、驚くほどシンプルに構成されます。

それも安価に。

一人一台の環境が、この観点から導きだされているのであれば

素晴らしい活用、素晴らしい学びの姿を見る事ができるでしょう。

明日も公開授業を見に行ってきます。

入口を確かめてきます。

一人一台 効果と課題

「一人一台 効果と課題」

5月24日(土)

九州ICT教育支援協議会 総会及び公開研究会in佐賀」が開催されました。

(主催:九州ICT教育支援協議会 後援:佐賀県授業デザイン学習会

協議会の設立当時から理事として関わり、今年4月より事務局を兼務する事になった関係で、総会と公開研究会を佐賀で開催する機会を頂きました。

研究主題は「一人一台の効果と課題」

佐賀県は、既報の通り今年度の県立高校の新入生に学習者用パソコンの購入を義務づけるなど、他地域に比べ早く、一人一台の情報端末の整備を実現している事例が存在します。

以下、佐賀県内で一人一台の情報端末を整備している事例

総務省フューチャースクール実証研究校 2校(佐賀市立西与賀小学校:Win7佐賀県立武雄青陵中学校:Win7

総務省ICT絆プロジェクト採択校 4校(佐賀市立赤松小学校:Win7、同若楠小学校:Win7武雄市立山内東小学校:iPad1、同武内小学校:iPad1 ※武雄市はH26よりAndroid

佐賀県先進的ICT利活用教育推進事業実証校(県立鳥栖香楠中学校:Win8、同唐津東中学校:Win8、致遠館中学校:Win7

佐賀県立高等学校(全36校 平成26年度入学生の全員:Win8

佐賀県立特別支援学校(全8校 小中学部:iPad4、高学部:Win8

武雄市立小学校(全11校の全児童:Android

平成22年度より実証校での取り組みがスタートし、良きも悪しきも多くの事例を経験してきた地域だと言えます。

実証校での公開授業や事例発表も重ね、一人一台の効果を探る過程や、効果そのものについて披露する機会はこれ迄もありました。

しかしながら、「課題」について共有し、公に論じる場が無く

その場を設定する事を第一の目的として企画しました。

プログラム内容は次の通り。

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遠くは関東、近畿、中国地方、九州内は沖縄以外の全県より、71名の参加者が集い、熱気に包まれた雰囲気の中、進行していきました。

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講演またはパネリストとして登壇された3名の先生方は、

「一人一台だからこそ出来ること」

 例えば、個別ドリル学習、個人での動画視聴やファイル編集など。

「一人一台だからこそ露になる課題」

 例えば、トラブルによる授業遅延、充電忘れなど。

経験してきたからこそ滲み出る説得力をもって、「効果と課題」について発表されました。

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ワークショップでは、7つのグループに分かれ、

ブレインストーミングKJ法を取り入れ、「効果と課題」について分類・整理していきました。

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教員、研究者、学生、ICT支援員、企業関係者などが入り交じり、活発な議論が展開されました。

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ファシリテーターも控えていましたが、殆ど出番が無いという嬉しい誤算。

課題意識の高い参加者から、多くの意見が出され、発表されました。

内容は、地元新聞や、協議会HP等で今後公表される予定です。

 

講演 〜 ワークショップ 〜 パネルディスカッション

3時間に及ぶ研究会を通して、

一人一台に象徴される、多数の情報端末を活用する場合の幾つかのキーワードが浮かび上がってきました。

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・オフライン

・余計な機能は使わない

・だれでも使えるICT環境

・授業デザイン

・ICT支援員

45分、50分という限られた授業時間の中で、学習目標に到達する為に必要な事です。

  学習指導要領を読むと、授業時数が増加し、消化する中での「余裕」が無くなっていることが理解出来ます。

先日開催されたEDIX期間中に参加した懇親の場で、

「教育関係のメーカー・販社関係者が、学習指導要領を読んでいない」

と指摘される方がいました。私が知る範囲でも、同意するところです。

その結果、

企業の論理により、細かな機能が付加され続け、使い辛い製品が産まれ続けています。

これらを組み合わせた環境で、プレゼンしてみてください。

時間内に意を伝え、理解させる事ができるでしょうか?

 

教育行政関係者の方、役所内の決められたシステム操作の経験でのみ判断し、

「ICT支援員は要らない」

「簡単な業務だから、臨時採用で構わない」

と考えてませんか?

一日、学校の情報担当者として過ごしてみてください。

もしくは、ICT支援員として過ごしてみてください。

どれだけの負担を強いる事業設計であるのか、体感出来るのではないでしょうか?

 

今回の研究会では、公開授業等これ迄の研究の場では決して見えてこなかった事が共有され、議論の深まりを生み出したのではないでしょうか。

「事実を知り、多様な立場から建設的な協議を行う場」が各地で増え、

「よりよい教育ICT環境」→「よりよい授業、よりよい学び」

につながっていく事を願って止みません。

 

ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

運営にご協力くださった皆様、ありがとうございました。

登壇くださった先生方、本当にありがとうございました。

30年後

「30年後、2044年」

何歳になっているだろう?

68歳

リタイアしているだろうか?生きてるだろうか?

僕の子どもたちはどうしているだろうか?

長男は41歳、長女は35歳

結婚しているだろうか?

孫は生まれているだろうか?

出張中の機内で読書(貴重な時間です)

「中央公論12月号 壊死する地方都市」

以下、本書より引用

ーーーーーーーーーーー

・「少子化」がもたらす「人口減少」は、同時進行した「長寿化」により高齢者が増え続けたことで見かけ上、隠されてきた。

・地方が自立した多様性の下で持続可能性を有する社会の実現を目指すことが重要となる。

・本来、田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子どもを産ませず、結果的に国全体の人口をひたすら減少させていく。私はそれを「人口のブラックホール減少」と名付けました。

中央公論2013 12月号 特集「壊死する地方都市」増田寛也 より

ーーーーーーーーーーー

日本の合計特殊出生率は1.41(2012年)

人口が維持される水準の出生率は 2.1

出生を担う若年女性が減少しているので、その水準でも人口減少は止まらない。

人口を増化に転じる為には更に高い出生率が求められています。

地方は高齢化の一途。雇用を担うのは、医療・介護業界。

今後、地方の高齢者も減少し、介護業界の都市部進出が加速するという予測です。

若者は職を求め都市部へ流入し、地方の少子化は加速の一途を辿ると。

東京都の出生率は最も低く、1.09

消滅、壊死する地方都市は多数現れると推計されています。

 

僕の息子や娘が、佐賀で暮らし、家庭を築き

当たり前の人生を送れるように

教育というものを幅広く捉え

真摯に考えていきたいと思います。

 

 

講演の内容と目的

「講演の内容と目的」

ここ連日、講演や講習にお声がけ下さる場所があり、

講師としてお話しする機会を頂きました。

昨日は九州、現地へ赴いて。

今日は北海道、こちらはFaceTimeを利用したTV会議形式での遠隔講演でした。

 

内容は

「ICTを活用した、小・中・高の授業事例」

「課題と解決策」

「ICT支援員の役割と必要な知識」

「これからの教育ICTの見通し」

などです。

「授業事例」は、一人一台の活用を中心に、

「良い事例」と「伸び代の大きい事例」

について、解説していきます。

一人一台、1to1の環境での課題は沢山ありますが、

技術的な課題と

マネジメントの課題について

解決策の方向性をお話ししました。

 

「ICT支援員の役割」は、

自治体や配置人数、ICT環境の違いにより多様であること。

「必要な知識」の2分野について

非常に多岐にわたる「技術的理解に関する分野」

列挙すると仕事の全体像が掴めたのではないでしょうか?

「教育行政と教育現場の理解に関する分野」

教育委員会制度や、教員の任命権者と服務監督者

学習指導要領の概要やそこから読み取れること、

著作権やサイバー犯罪等に関する関係法令の理解、

などについてお話ししました。

 

「これからの教育ICTの見通し」は、

2015年〜2020年までの家庭内と教育現場のICT化の見通し

20年後、2030年台の社会情勢のイメージ

次世代環境で求められること

についてお話ししました。

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最後に使ったスライドです。

書いている内容は、至極当たり前の事です。

しかしながら、導入する事が半ば目的化していたこれ迄のICT環境整備では

なかなか感じる事ができなかった、大切な視点です。

 

「1to1などの次世代の教育ICT環境の整備で大切な事とは何か?」

最終的に、ここを考えていただくことが講演の目的でした。

 

身の回りのICT環境はいかがでしょうか?

何を動機として整備されてきたのでしょうか?

誰が必要とした機器であり、システムなのでしょか?

 

「より良い授業のために必要な環境とは?」

「子どもたちのどこを伸ばす為に活用するのか?」

「活用し続ける為の手だては講じられているのか?

 

この3点から出発した整備であるならば

埃をかぶるような機器は生まれないはずです。

 

今後、タブレット端末の導入〜1to1の環境が実現されるならば

「運用でカバーするという誤摩化し」

は通用しません。

かといって、最新鋭の機器やシステムを盛り込んでは

維持し続けるだけで多額のコストを必要とします。

限られた予算の中で、何をやって、何をやらないのか?

高度な舵取りが要求されますが、

拘りと柵から離れ、

過去に学び、未来を予測し、専門的知見を求めていけば

まだまだ、できる事は沢山あるはずです。

 

転換期を迎えた今こそ

問い直していきたいと思います。

 

 

 

ピッケのつくるえほんワークショップ

ピッケのつくるえほんワークショップinさが

5月11日(日)に佐賀市立図書館の多目的ホール

午前と午後の2回、開催しました。

幼児とその兄弟姉妹を対象に、親子合わせて定員40名の2回。

結果、用意していた22台のiPadはフル稼働状態で、

なんとか無事に終える事が出来ました。

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これも、参加してくれた子供たち、保護者の方々、

現役のICT支援員や、幼稚園教諭を目指す学生ボランティアスタッフの皆さん、

iPadをお貸し出しくださったS社のKさん。

特別ゲストのつるみね保育園杉本正和園長

ピッケの作者の朝倉民枝さん

皆様のおかげです。心から感謝しています。

※当日の様子は、弊社HP

 「ピッケのつくるえほん」ワークショップ@佐賀市立図書館: 「ピッケのおうち」ブログ

でもご覧頂けます。

 

具体的な準備を始めたのは3月中旬から。

告知や集客、会場準備にICT環境構築と慌ただしく過ぎた2ヶ月でしたが、

構想そのものは、じつは4年前から暖めていました。

初めてピッケのつくるえほんアプリを知った日から、

「いつか佐賀でワークショップを開催したい!」

と思い続けてきました。

 

それが、こうして実現でき、

参加した子供たちの笑顔に囲まれ

本当に幸せだと感じました。

 

前日の夜は「大人のワークショップ」と題して

バーで飲みながら、いい歳のおじさんたちが絵本づくりに没頭しました(笑)

 

そのときに、朝倉さんがお話ししてくださったこと。

とても心に響いています。

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ピッケのつくるえほんのコンセプト

デザインの意味

願い

絵本づくりを通して体験してほしい「喜び」とは何か?

 

このアプリに秘められた

楽しいの先の体験や物語を創りだすチカラ

 

これを、改めて知り、実感した二日間でした。

 

誰かの事を想い、話を紡ぎ、創った、世界でひとつだけのえほん

きっと、子供たちや贈られた方の宝物となって

いつまでも残り続けてくれると思います。

 

それと、「作家になった」

という体験と感動も

子供たちの胸の中にずっと残り続けてくれることを願っています。

 

今回完成したえほんを公開させていただきます。

「ぴっぴのきもだめし」 作家:あきと 

※閲覧期限8月10日まで

iPadiPhoneでは音声も視聴できます。

想像力と創造力を感じて下さい。

この純な感性を大切に伸ばして、広げていきたいですね。

 

本当に、やってよかった。

出来る限り継続していきたいイベントです。

教育ICT事業推進の課題とこれから

「教育ICT事業推進の課題とこれから」

ここ数日、某地域の事例に関する報道や、

これに起因するネット上の書き込み、

SNS上での議論等々

活発な意見交換が様々な場と手法で展開されています。

「ネットワークを介して、多様な意見を知り考察する、良い時代になったな」

とICTの恩恵を多いに感じています。

 

さて、最近講演する機会が増えてきまして、

いくつかの資料を準備しています。

その中から、現時点で提案したい内容を一部抜粋して公開します。

 

 
もう少し詳しい事は、
5月24日(土)に開催される
のパネルディスカッションでお話しいたします。

 一つだけ、留意いただきたいのは
「地域の事情はあるにせよ、どこでも起こり得る課題である」
という事です。
今後、更なる教育ICT事業、情報化推進をお考えの際には
一度、全体を俯瞰し、不足部分の洗い出しをお願いします。
その際に、「過去の事例」を紐解き
「結果と課題」を掴み、参考にしてください。
 
まだまだ、出来る事は沢山あります。