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教育ICTデザイナー  田中康平のブログ

教育ICT環境デザイン、ICT支援員、幼児教育とICT、など

大雑把な議論の行く末

「大雑把な議論の行く末」

最近、全国系のテレビや新聞紙面、雑誌、Web媒体などで「教育ICT」に関連する話題が取り上げられる機会が増えてきました。

それだけ、世間の関心を集めているのだと、私自身は喜ばしく感じています。

そのような中、見聞きしている媒体や人によっては「情報教育」「ICT教育」「ICT利活用教育」「デジタル教育」など、様々な言葉が飛び交い、よく聞くと同じような意味合いだったり、掘り下げると異なる文脈を指していたりと、そうするうちに内容がよく掴めなくなることもあります。

先日放送された、NHKクローズアップ現代では「学びを変える?〜デジタル授業革命〜」と題して、国内(佐賀県広尾学園)と海外(韓国)など、多様な事例を交えて、現状と課題についてレポートされていました。

視聴後の感想は「?」が沢山浮かんでしまいました。

「教育とICT」の露出が増えるほど、違和感が残ることが多くなりました。

例えば、高校で情報端末を含めたICT環境整備を行い、実践を進めている事例では

・県立高校の全1年生:一人一台:Win8:半BYOD(保護者が一部負担):佐賀県

・県立高校の特定の科の生徒:一人一台:iPad:BYOD:千葉県立袖ヶ浦高校

・私立高校の特定の科の生徒:一人一台:iPad:BYOD:広尾学園高校

・私立高校の教員と一部のコースの生徒:iPad:貸与:博多高校

・私立高校の全2年生:Win8:貸与:立命館宇治高校

・私立高校の一部のコースの生徒:Win8:BYOD:佐野日大高校

などが挙げられます。

公立と私立、WinとiPad、学年、学科、コース、BYODと貸与、、、

文字情報からでさえ、導入状況や条件が個々に異なっていることが分かります。

カリキュラムや学校の方針が異なると、活用法は驚くほど違ってきます。

当然、稼働状況、課題や効果も様々です。

それらが、教育ICTの先進事例として同じ土俵で扱われる事がしばしば見受けられます。

一般の方の視点で考えると、

「学校」「ICT」「デジタル」のようなキーワドで捉えられ、

「あの学校は上手く行っているのに、なぜあそこは課題が多いの?」

「海外では効果がないという意見があった、日本でも同じではないか」

iPadは良くてWinは良くない」

「Winは良くてiPadは良くない」

「海外で成功した授業法で、日本の授業も革命が起きるかもしれない」

のような、とても「大雑把に」受け止められているのではないかと、心配になります。

個別事例から課題や効果を読み解く際には、

ICTを導入した「目的」「背景」「構築された環境」「活用法」「指導法」などの違いを整理して考え、議論しなければ、課題解決策や効果を生み出した要因を把握する事は難しくなります。

公立と私立では「目的」「背景」など大きく異なります。

公立でも「地域のICT導入の歩み」や「進学校、実業校などの校種」でも異なります。

小・中・高校でも「担任制と教科担当制」「部活の有無」「教員の年齢構成」など多くの事が異なります。

子どもたちの様相も様々です。

入試により選抜された学校か否か、でも異なります。

「活用法」「指導法」など教科によっても異なります。

地域の実情によっても異なります。

国が違えば、教育方針も、教育内容も、文化も、教員の業務内容も大きく異なります。

選挙で「教育」が争点になる国もあれば、

「一点突破主義の劇場型選挙」が実施される国もあります。

 

右も左もよく分からない創世記にありがちな大雑把な議論の時代はそろそろ終えて、

個別事例について時系列や背景を含めて紐解きながら

具体的な知見を深め、共有する時代へ歩みだしていくために、

「教育ICT」の事を四六時中考えている者としては、感じている違和感の源を整理して、望ましい議論の方向性に対する自身の考えを発信する必要性を感じています。

一部の専門家だけではなく、少なくとも社会へ発信する立場にある教育関連の記者の方々にも認識して頂き、

切り口鋭い問題提起を通して

「より良い授業」「より良い学び」「子どもたちのより良い未来」に繋がるような建設的な議論を促して欲しいところです。

このまま「大雑把な議論」を続けていても、いつの時代も同じ課題を持ち続け、多くのコストを浪費することになりかねません。

ICTを教育に取り入れる事は、ここ数年の話ではなく、ずっと昔から脈々と続けられてきた事です。

1986年に出版された「マイコンクラスルーム 未来の教室 CAI教育への挑戦」(中山和彦・東原義訓 著)の中では、

「高度情報化社会においては、これまでの工業社会の下とは違った人間が要求されている。画一的な人間ではなく、情報についての理解とそれを自分なりに処理する事のできる個性的な人間である。学校はそれに対し、どのように対処したらよいのであろうか。」と提起されていました。

28年も前に、今の議論と同様の事が行われていたようなのです。

なぜ、同じ課題を抱え続けているのか?

目新しい技術や先進事例が話題を集めるのは当然ですが、

その奥底にある「未だ解決されていない課題」に対して、広く議論できる時代の到来を望んでいます。

 

(追伸)

最近、Web上に「スナック・ネル」という一風変わった空間をオープンしました。

毎週月曜の22:00〜23:00に常連のお客様をお迎えして、教育とICTについてビデオチャットGoogleハングアウト)を利用して議論し、その様子をYouTubeでオンエアーしています。

今週の様子は

スナック・ネル 第2回営業[20140908] - YouTube

より、どなたでもご視聴いただけます。

ご意見等を書き込むタイムラインは

FaceBookグループ「スナック・ネル」の中に開設しています。

「教育とICTを愛する方」であれば、どなたでもご参加頂けます。

方々に散らばってしまっている課題や知見を持ち寄って、

フランクに話し、考え合える場になればとスタートしました。

ゆるやかに始めていますので、あまり多くを期待せず、長い目でお付き合いください。

こちらの方も、よろしくお願いいたします。