教師がICTを活用するということ(後編)
「教師がICTを活用するということ」(後編)
後編では、教師がICTを活用していく上で参考になる事例から考えてみます。
「東京都墨田区」
平成26年度に小中学校5校のモデル校で、普段の授業で活用するためのICT環境を整備。
概要は
・教師一人一台のiPad
・各教室に、AppleTV、AirMac Express、黒板上部にスライド式のプロジェクターを常設。(一部の教室では壁面の設置スペース等の関係で自立スタンド型が整備されている)
・実物投影機(小学校)、既存のWindowsノートPC
実際の授業の様子は
教育家庭新聞2月号の特集記事
「教員1人1台端末で授業改善<学校ICT化推進事業 東京都墨田区>」
こちらに詳しく書かれています。
大切な視点として
・誰でも、いつでも、簡単に活用できる環境
・教師の創意工夫が発揮しやすい環境
・教師のタブレット端末活用からスタート
・シンプルな構成
・急激に授業スタイルを変えない
があげられます。
iPadでも、実物投影機でも、WindowsノートPCでも、自由に選択できます。
もちろん、使わないという選択肢もある。
シンプルな構成である点も重要です。
iPadを活用すると言っても、事前に撮影していた教材の写真を黒板に投影し、チョークで書き込むだけ。
授業は、これまで通りのスタイルで進行します。
板書の時間が省かれた分、教える内容は増えています。
学習者との対話も増えている。
操作研修など必要がないレベルの構成と活用法。
シンプルであるがゆえに、教師の創意工夫の余白が大きく残されています。
その結果、短期間のうちに、多くの教師に受け入れられています。
「教材コンテンツが不足しているから、活用が進まない」
「教師のICT活用指導力を向上させるために、研修を充実していきたい」
「教師と学習者がインタラクティブに情報をやり取りできるICT環境を整備したい」
という声を聞くこともあります。
相談を受けることも多いです。
その時、
「もう少し現場や授業の実態に合わせた環境整備について検討するとどうだろうか」
と伝えています。
例えば、
全ての漫才師が同じネタをやって、その全てが面白いのでしょうか?
それぞれの漫才師が、自分たちの個性、間、センスに合わせたオリジナルのネタを創り提供するからこそ、面白いのではないでしょうか?
また、その時の客席の様子に柔軟に合わせながら進める、アドリブを効かせていくことも重要でないでしょうか。
授業も同じことがいえるのではないか?と考えています。
授業で活用する教材コンテンツ。
自分の授業をより良くしようとするほど、その教師のオリジナルなコンテンツになっていくと思います。
ICT活用法も、活用のタイミングも、教師の間、センス、その時の子供達の様子に合わせたアドリブなど、実に多様です。
そういった
「教師の主体性」
「自由度」
を発揮しやすい環境が大切ではないかと考えます。
操作を覚えることから始めなければならない機器やシステムでは、多忙な学校現場で活用が浸透するまで、どれだけの時間が必要でしょうか。
インタラクティブなICT環境が授業を進めてくれるわけではありません。
目の前の子供達と教師の対話、人間的な関係性の中で授業は進んでいきます。
不意の方向転換に臨機応変に対応する。
トラブルが極力でない。
操作の手数が少ない。
教師自身が、子供達に顔を向けて授業ができる。(電子黒板やタブレット端末を見続けない)
普段の授業の様子をしっかり理解していくと、
「必要なもの、不要なもの」
が見えてくるのではないでしょうか。
先日、長崎県の私立創成館高校で、授業でのICT活用についてお話しさせていただきました。
その様子は、「創成館高校 校長ブログ」に書かれています。
シンプルな機器、端末、アプリを活用した、だでれも簡単にできるICT活用。
ICT活用が目的化しない。授業が良くなることが目的。
教師が、私物のスマホやタブレット端末を、気軽に楽しみながら活用する。
この辺りを中心に伝え、
後半は実際にスマホやタブレット端末を活用した体験会となりました。
「検索した言葉がその場で大きく表示される!」
「写真の拡大も、ピンチアウトで大丈夫!」
「後ろの席でも見えるぞ!」
「今度、使ってみよう!」
「部活でも使おう!」
そういう言葉が飛び交いながら、活用のアイデアが湧いてくるのが伝わってきました。
「自分が普段使う端末=手に馴染んだ道具」
であることも、活用のしやすさ、アイデアの具体化につながると思います。
「教師がICTを活用するということ=よりよい授業の創造」
そこには、
「教師一人一人の個性や創造性を発揮しやすい」
「シンプルで自由な活用が可能なICT環境」
「活用する人を尊重する視点」
が求められるている。
そう思います。