教育ICTデザイナー  田中康平のブログ

教育ICT環境デザイン、ICT支援員、幼児教育とICT、など

教師がICTを活用するということ(前編)

「教師がICTを活用するということ」(前編)

 

「教育の情報化」「教育におけるICT活用」

について考える中で、幾つかのキーワードが浮かんできます。

「電子黒板」

「デジタル教科書(指導者用)」

タブレット端末」

無線LAN

「協働的な学習」

これらについて、日頃気になっていることを書いてみます。

 

「電子黒板(液晶等のパネル型)」

・70インチでも小さく感じる。(16:9の表示やPCの高解像度化による。)

・操作ボタンが視界に入る。学習者から見ると不要な情報である。

・学習者の視点を「従来の黒板」⇄「電子黒板」と行き来させている。

・高さ不足の場合、後方の学習者は、前方の学習者の頭部に遮られ、見えていない。

「電子黒板(プロジェクタ型 スタンド式)」

・大きく投影できる。しかし教室内の設置場所に困る。

・長年使っているうちに、プロジェクタの自重により位置がズレてくる。

 結果、投影面に歪みが生じ、補正メンテナンスが必要になる場合がある。

・操作ボタン、高さ不足については、パネル型と同様。

どちらにも言えることとして、

・学習者は「大きく光る画面」に対して無意識に反応する場合がある。
 「見せる必要がない場合の対処」「見せないという見せ方」
 も考えなければならない。

 

「デジタル教科書(指導者用)」

ツールが豊富。利用者に「慣れや習熟」を求める。

・表示している教科書の内容以外の情報が多い。

 結果、教科書の内容が小さく投影されることがある。

・教員の操作と、指導するための振る舞いは違う。
 学習者の思考を惑わす場合がある。

・整備率と学力向上との相関性は、現時点では見られないようだ。
 (今後、調査を進めると、明らかになるかもしれない)
 ※参考資料「デジタル教科書の整備状況と学力調査都道府県別結果の考察図」

f:id:tanakou64:20150219052036p:plain

 

タブレット端末」

・OS、キーボードの有無等の違いにより様々。一括りには語れない。

・起動又は認証処理やソフトの更新等に時間を要すと、学習活動の時間が少なくなる。

・オフラインでの活用が可能な設定、OS、が望ましい。

・とにかく、写真や動画を撮る。その保存分類が一番の課題。

・落とす。壊れる。こういうことは「必ず起きる事」として考えておく。

 

無線LAN

・教室に41台の端末が存在し、かつ複数の教室で稼働している場合、全ての端末が無線LAN接続を維持し続けることは極めて難しい。

・「無線LANが接続できない→無線LANアクセスポイントが悪い」ではない。

 原因は、使用している端末やソフト、システム側にある場合も多い。

 これを解明するのは容易ではない。

無線LANでのやり取りが前提のシステムを活用した授業では、やり取りの手間や通信障害等で授業進行が遅くなるケースがある。

・そもそも、通信し続けなければならない活用方法やソフト、システムが必要か?
 ここを見直す必要がある。

・有線LAN、HDMI等、「有線ケーブルの利用も可能な環境が必要」となる場合がある。

 

「協働的な学習」

・従来から行われていた「ペア学習」「グループ学習」との違いは?

タブレット端末を活用し、個々の意見を電子黒板等に集約して議論する。

 個々の意見を小さなホワイトボード等に書き、黒板に貼り並べて議論する。

 学習効果にどのような違いがあるだろうか?

・協働的な学習を促進するのは、「ICT環境」「教師による動機付け、働きかけ」

 どちらが必要か?片方だけでも良いか?その両方が必要か?

 

私が学校現場に行き、ICTを活用した授業をサポートする、観る、先生方と話す中で感じてきたことです。

この他にも様々な事が指摘されるかもしれません。

 

「なるほど、こういう活用は、この活動では有効だ」

と感じることあります。

一方で

「この活動では、ICT環境が邪魔をしている」

「オフラインの方が早い」

「思考のスピードの方が勝っている」

と感じることもあります。

 

どちらかというと、後者の方が多い。

 

現場では、先生方からこう聞かれます

「効果的な活用法を教えて欲しい」

「ここぞ!というときに使いたい。そういう事例を知らないか?」

この様な質問の裏側には、

 

「思うような(言われるような)活用ができない」

「学習効果に結びつく実感がない」

「自分たち(利用者)の手に馴染んでいない」

という課題が考えられます。

 

この課題を解決するためには、

学習者用のタブレット端末や

授業全体に影響を与えるような大掛かりなICT環境ではなく、

「教師がICTを活用するということ」

に絞って整理し、

「必要なコト、必要なモノ」

を考えていくべきだろうと考えています。

 

その際に参考となる実践が始まっています。

ここから先は、実際の事例をもとに考察していきます。

(後編へつづく)

 

学習者用端末の整備で考えなければならない「二つ」の視点

学習者用端末の整備で考えなければならない「二つ」の視点

昨年後半から年明けに様々な学校へ行き、また関係者と情報交換する中で

教育分野のICT利活用の潮流の変化を感じています。

潮流をどう捉えるかは、それぞれの立ち位置によって違いがあるでしょう。

私が感じるのは、「公立校」という岸辺から見ると上げ潮でもなく、下げ潮でもなく、滞留しつつあるかなと。

その先の沖合を、「私立校」という違う潮が結構な速さで流れ始めているように見えます。

沖合の潮流が本流になるころ、ようやく引かれ潮が岸辺(公立校)に到達するのかもしれません。

 

ここ数年、先進的と喧伝されてきた1to1の公立校の事例を見ると、

「陳腐化を始めているのでは?」と感じることがあります。

ネットワーク環境や端末スペックなどもそうですが、

学習者用端末の活用も、提供者や環境の枠に合わせ、利用者に無理を強いながら推し進めているように見えることがあります。

反面、私立校のそれは、1to1の在り方を利用者に委ねることで、一見チャレンジングな様で、実は合理的な活用に思えます。

公立校が停滞しているように思える原因はなぜか?

と考えた時に

「二つ」の視点にたどり着きました。

 

一つは、「企画から稼働が始まるまでの時間の長さ」です。

大まかに、その長さを示してみると、

1年目:事業立案し予算要求(モデル校)

2年目:当初予算に計上。1年前の計画に沿った調達/工事等の環境整備(モデル校)

3年目:モデル校に準じた内容での全校整備

4年目:全校での本稼働

公立校で1to1の学習者用端末整備を行った事例では、全校稼動まで概ねこの様な時間をかけて整備していました。

計画から4年も経過しています。

デバイスやシステムの進化を考えると、長過ぎます。

そういった事に対して柔軟に対応しながら適応していけば良いのですが、中々そういかないのが公立校の難しいところです。

方や私立校は、トップの判断の元、短期間で整備を終えることが可能です。

クラウドサービスの活用など、時代に合わせた柔軟さも発揮しやすい。

この違いは、その後の活用にも大きく影響してきます。

今後は、私立校の好事例に、公立校が倣うケースが出てくると考えます。

 

もう一つは「整備の目的」です。

例えば、先進性を求め国内でもいち早く推し進めた整備。

だとしても、企画から稼働までの時間の長さを考えると、先進性を確保できているのか?

冷静に見なければなりません。

整備が目的ではないはずです。

学習者用端末を整備する本来の目的は、

「学習者にとって有益なものにする」

この点にあるはずです。

「学習者にとって有益」について関係者間で考える際に、

育みたいチカラ、そのための授業や学習の在り方、ICTも含めた環境、ツール等の活用などを考え、関連付け、俯瞰して、

「自らの言葉として捉えること」

が大切なのではないでしょうか。

この点を整理するためにワークシートなどを用いて、関係者間で話し合ってみるのも良いかもしれません。

事前に、様々な事例や今後の見通しなどのインプットがあると、なお良いでしょう。

先日、ある研究会で活用したワークシートをベースにしたものがこちらです。

 

f:id:tanakou64:20150204064954j:plain

考え付く多くのことを出し合い、関連付け、無駄なものは削っていきます。

おそらく1時間や2時間では終わらないでしょう。

何日間か、何週間か、何ヶ月か

ある程度の時間をかけてじっくりと整理し

「自らの言葉」を関係者間で共有できたら

どんな環境にもブレない軸が生まれると考えています。

 

この「二つ」の視点

どう思われますか?

学習者用端末も含めた、より良いICT環境整備が進み、

学習者の活動が豊かなものになっていくことを願っています。

公立小中高校のICT環境デザイン 3つの要素/3つの関係先/10の項目

「公立小中高校のICT環境デザイン」

先日、11月23日(日)

日本デジタル教科書学会研究会「21世紀の学び 3本の矢の提案2 in 東京」

が開催され、その中で「21世紀の学び 環境デザイン編」と題したパネルディカッションに登壇させていただきました。

この「3本の矢の提案」は、北海道の山田秀哉先生、京都府の広瀬一弥先生、佐賀県の内田明先生(いずれも学会理事)による実践をベースとした提案型研究会という内容。

第1回が佐賀で開催され、その時は模擬授業用の環境準備とICT支援員という役割で関わらせていただきました。

第2回は舞台を東京に移し、お話しする機会をいただきました。

パネルディスカッション1は「授業デザイン編」として、前述の3名による興味深い発表や、現場教員ならではの指摘がなされました。

パネルディスカッション2は「環境デザイン」です。

徳島文理大学の林向達先生のコーディネートのもと、私と株式会社エデュテクノロジー

の阪上氏が登壇し、コンサルタントの立場から環境デザインの課題を議論しました。

「環境デザイン」と一口に言っても、とても幅広く、捉えどころが難しいテーマです。

 今回は、課題の共有と入り口の整理を中心に準備していきました。

私が学校のICT環境整備に関わるようになったのは、2000年のミレニアムプロエクトの頃からです。

当時は、数多くの校内LAN整備に関わりました。

PC教室が中心だった学校に、ネットワークが敷設され、校内の多くの場所で情報共有やインターネット利用が可能になった時代です。

学校によっては、グループウエアやe-Learningシステム、動画ストリーミング環境なども整備されました。

その後、一部の自治体では校務用端末や校務支援システムの導入、ユニット型電子黒板の整備なども始まりました。

学習者用のICT環境は、PC教室が中心。

デスクトップPCとサーバ。教育用ソフトウエア、授業支援システムなど。

今と違うのは、教育用ソフトウエアが豊富に購入されていた点でしょうか。

自治体は平成の大合併のピークを迎え、予算配分が見直されていきます。

結果、教育ICT関連予算は削減の一途を辿っていくことになりました。

ある自治体では、PC教室1教室あたりの予算額は2000万円を超えていましたが、毎年減り続け、今では半額以下。

一度減った予算が増えることは、極めて稀です。

その稀な例は、首長の選挙公約やトップダウンにより、学習者用の情報端末整備などに取り組んだ自治体です。

ICT環境は、タブレット端末やクラウドなど進化した部分がある一方、

活用が難しく、思うような成果が現れていないのではないか?という課題も指摘されています。

その原因を探る中で、「ICT環境デザイン」という視点に辿り着きました。

私見ですが、ICT環境デザインは、大きく3つの要素に分けることができると考えています。

f:id:tanakou64:20141125224931j:plain

研究会では、「環境整備に至る過程のデザイン」の中からお話しさせていただきました。

この要素の中は、更に「3つの関係先と10の項目」に整理することができます。

f:id:tanakou64:20141125225118j:plain

これらが連動せず、それぞれの課題を抱えたまま整備へ進んでいるのが、活用を難しくしている要因の一つだと考えています。

どうすれば、解決できるのでしょうか?

そのために必要だと思う方策として

・過去または現在の環境を評価する

・検討委員会等、組織や体制の在り方を検討する

・導入までの手順を見直す

このような点について指摘させていただきました。

資料全体はこちらです。

絵を見て、頭の中を整理して考えてみると、課題解決に向かいそうに思われるかもしれません。

しかし、大切なのは

「俯瞰して整理し、関係各所を調整しながら、やらないことを決めていく

これができるかどうかです。

パネルディスカッション1の中で、

「現場の教員は、大盛りご飯(様々な課題)をさらに盛られて、もう食べられない状況」

という指摘がありました。

足し算だけではなく、引き算が出来る人や組織が本当に求められています。

その「人や組織」は、誰?どこ?

ここが最大の課題かもしれません。

私の仕事は、そのような「人や組織」を育て、増やすことです。

来年の夏には、3つの要素に関するワークショップ等のセミナー開催を計画しています。

日頃実施している企業内研修やコンサルティング業務、セミナー、このような研究会等を通して、より良いICT環境デザインの実現に貢献できればと思います。

 

研究会の企画・運営に関わられた方々、

発表の機会を与えていただき、ありがとうございました。

同日ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

まずは、問題提起から。

ICT環境デザインを考えるスタートラインに立てた1日でした。

公開授業の参観から想いを巡らせる

タブレット端末や電子黒板など、ICTは道具・ツールにすぎない」

10月~12月上旬、

各地の研究指定校や実証研究校の多くが公開授業を実施しています。

私も、毎年幾つかの公開授業を参観しに出かけます。

職業柄、その殆どはICTを利活用した授業を中心に観ることになります。

研究主題には、各学校が取り組んできた研究対象の教科やテーマが書かれているのですが、

副題に

「〜ICTの利活用を通して育む※※〜」

といったものを目にします。(主題に組み入れられていることもありますが)

そして、全大会などで耳にするのは

タブレット端末や電子黒板など、ICTは道具・ツールにすぎない」

というフレーズです。

しかし、道具やツールの利活用が、研究の主題と言わなくても副題に添えられることは、

ICT以外にあったでしょうか?

例えば

「最新の調理器具の利活用を通した次世代の調理法と食育

「デジタル顕微鏡の利活用を通して育む実験と新たな観察力」

など、、、

よく耳にする

タブレット端末や電子黒板など、ICTは道具・ツールにすぎない」

というフレーズは、

「道具に左右されずに授業の本質を高めるための利活用に目を向ける」

というような意味合いで語られているのだと思います。

その視点は至極真っ当な、決して外してはならない本筋でしょう。

実際の公開授業でも、ICT活用を披露する面はある程度含みつつ、

やはり授業の内容や学習目標の到達が最も大切なテーマとして扱われていることが見てとれます。

現在の教育課程における教科書を用いた指導を、

「より良いものにしよう」

と日々研究研鑽に励まれている先生や学校の取り組みが、そこかしこに滲みてている場面を目にします。

そこでは、ICT云々を超越した、とても純粋な想いが伝わってきます。

 

「一つの道具やツール以上の可能性」

反面、「一つの道具・ツール」を強調するということは

「一つの道具・ツールに過ぎない範囲にその機能を制限して利活用する」

という意識の表れではないかと捉えることもできるのではないでしょうか。

他の道具やツールと違い、その利活用が研究の副題に添えられるということは、

研究の新規性や先導的存在であることを伝える意味合いも含まれているはずです。

そのような取り組みの中にモヤモヤと内在しているのは、

「一つの道具やツール以上の可能性」

ではないでしょうか?

21世紀型能力など、

「次世代を生きる子どもたちに身に付けせたいチカラの育成につながるのではないか?」

といった面への期待感だと思います。

21世紀型能力の育成について、大枠の言葉で語られることが多いのですが、その育成や評価方法について具体化して提示している例を目にする機会は多くはありません。

先日参観した、京都教育大学附属桃山小学校の「メディア・コミュニケーション科」(※文部科学省の研究開発指定を受け開発された新教科)など、学校全体で学年に応じた指導法や評価規準を研究し、カリキュラムを開発した学校では、

「一つの道具やツール以上の可能性」を取り入れ、21世紀の情報社会を生き抜くチカラを育むための「子どもたちのチカラの増幅装置」のとしての活用を見ることができました。

増幅装置の機能として主に活用されているのは、情報発信、情報の伝達に関する部分。

情報を掴む・読みとる・判断する・表現する・伝達する・広く発信する

といった部分にフォーカスされている=「メディア・コミュニケーション科」なのだと解釈しています。

これが、どの学校でも一様に実践できるかというと、それなりの課題があり、簡単にいかないと思います。

教科として、「ICTが持つ、一つの道具やツール以上の可能性」を含めて取り組む場合のモデルとして学ぶ部分は大きいでしょう。

 

「生活の中にある道具・ツールを活用する」

子どもたちの生活には、様々なテクノロジーがあふれています。

生まれた時から身の回りに存在するデジタルデバイスなどを、

「当たり前の存在」

として当たり前に活用しています。

それが、学校に来ると、当たり前に活用できないことの方が多い。

生活の中にある道具・ツールを活用するメリットは大きく、その点に異論をお持ちの方は少ないと思いますが、学校内の「ICT環境」に限って考えると、なかなか実現しません。

そこには、

「当たり前に活用出来る環境にない」

といった環境デザイン的側面の課題が横たわります。

この辺りの課題解決は早急に考えなければならないでしょう。

子どもたちに

「課題発見・問題解決型」をチカラを求めるのならば、

周囲の大人が率先して実践しなければと、考えずにはいられません。

 

そして、その先に共有したいのは

・テクノロジーを享受し、消費するだけの存在として止まるのか?

・テクノロジーを活用し、新しい何かを創造する側に立つのか?

という視点です。

後者を選択するならば、

「テクノロジーを活用し、新しい何かを創造する側」

に求められるものが「何」であるか?を考え、

子どもたちに「具体的に提供する」方法を用意しなければと考えます。

その一つが「プログラミング教育」であったり

「ハードウェア知識」「ネットワーク知識」を教える事かもしれません。

これらを国内の公教育の現場に取り入れることの難しさは、しっかり考慮して進めなければなりません。

思いつきで取り組めるほどの余裕と弾力性は、今の学校現場には非常に少ない。

制度的、構造的な問題が解決されるには、おそらく相当の時間が必要となるでしょう。

しかし、これを待っている間に、年月は進んでいき、社会も変化していきます。

私に出来ることは、

テクノロジーを活用し、新しい何かを創造するチカラ」

を、子どもたちが身につけらる場所や機会を

私の立場で提供することです。

弊社の2期目にあたり、最も注力する部分です。

公開授業の参観から想いを巡らせた内容を、記しておきます。

「スナック・ネル」

「スナック・ネル」って何?

ご存じない方は「?」と思われるでしょう。

実は、8月下旬から「スナック」のマスターを始めました。

といっても、実際の店舗はなく、ネット上に存在する「場」です。

毎週月曜日の22:00ごろ、マスター(僕)と常連のお客様二人とゲストの方がカウンター(ここではビデオチャットGoogle ハングアウト)に集い、教育とICTにまつわる時事問題から過去と未来の話などをゆるやかに広く深く語り合っています。

その様子は「ハングアウトオンエアー」を使ってYouTubeにライブ配信。


田中康平 スナック・ネル - YouTube

YouTubeチャンネルにアーカイブされていきます。

「スナック」ですから、もちろんアルコールを片手に、普段着の会話が進みます。

座席はカンター以外に「ボックス席」も用意されています。

ボックス席は、Facebookの公開グループ「スナック・ネル」の中に設置され、

毎週月曜の放送中に、様々な方々からのコメントが寄せられます。

このグループは、「教育とICTを愛する人」であればどなたでも参加できます。

グループのメンバーであれば、どなたでも参加承認していただけます。

僕が知らないところでも、じわじわ増えているようです。

最近、常連の林さんがスナック・ネルのWebサイトを創ってくださいました。

f:id:tanakou64:20141012082511p:plain

お店の概要は、こちらに書かれています。

過去の営業(放送)アーカイブやゲストの方も、こちらのページからご覧いただけます。

毎週月曜の22:00頃からスタートします。

一応1時間の予定なのですが、毎回話は尽きず、15分〜1時間オーバー。

放送終了後も、さらに話が弾む事もしばしば。

話題に事欠かないことの裏返しかもしれません。

これ迄の主な話題は

・ICT環境整備の課題、タブレット端末と無線LANの技術的部分など

・新たなICT環境と自治体のセキュリティーポリシー

・行政と教育現場

・一人一台のタブレット端末と財政負担など

総務省文部科学省などの国策事業と今後

・ICT支援員について

・公立学校と私学の違い

・海外のICT活用の話

・ICTを活用した授業

・学会の動き

など、思い出しただけでも多岐にわたります。

 

スナック誕生のキッカケ

以前、このブログで書いた記事


安易なタブレット端末導入への警笛 - 教育ICTデザイナー 田中康平のブログ

これを、林向達先生(徳島文理大学)がFacebookで投稿してくださった8月21日。

投稿内のコメントで、この記事で指摘した課題に共感してくださった坂井岳志先生(東京都内の小学校教諭)と林先生、僕の3人で

「様々な課題を表に出して、オープンに持続的に議論する場が必要」

という見解を共有した事でした。

その4日後、8月25日(月)にプレオープン。

この身軽さは、ICTの成せる技でしょう。

今夜(10月13日 月曜22:00ごろオープン)の営業で7回目になります。

「ネル」の由来ですが、
弊社(株)NEL&Mから。NELは、New Education Labの略です。

スナックの方向性にもマッチしてるのではないかと。後付けですが、、、

よく「ネル=練る」と思われるようです。

それでも良かったかなと、ゆるく考えている自分がいます。

林先生とは、東京の研究会でお会いしたときに、こちらから強引にお声掛けしてからのご縁。

ニュートラルな立場で話してくださる、大好きな研究者です。

坂井先生とは、教育ICTの課題について発信していたところへ大いに共感してくださり、上京した際に懇親を深めることになってからのご縁。

若気の至りも抜けない僕の話にも、真摯に耳を傾けてくださる素晴らしい先生です。

お二人とも、日頃直接お会いする機会は多くはありませんが、SNSなどICTのチカラを借りて繫がりを保ち続けている間柄です。

 

スナックの目的

点在している「教育とICT」に関する議論や課題を集めて、オープンにフランクに話し考える「場」となる事です。

学会や研究会、展示会など、各地で課題意識を持った方々の意見や情報交換がなされていますが、その場限りで終わる事も多く、霧散している印象です。

以前、林先生がいつも書かれる[常連日誌20140908](※Facebookグループ内)の中で

「この国が議論ばかりして前に進んでいないとしたら、それは議論を振り返らずに捨ててばかりだからであり、お互いに好きな部分だけを見続けているからではないか」

という指摘がありました。

共感するところが多々あります。

「今度じっくり話しましょう!」と別れた後の今度が中々来ない。

皆さん忙しくて、自分の仕事や研究に励まなければならない。

そういう中で、教育とICTに関しては、過去からの同じ課題を解決しないまま繰り返し続け、決して前進しているとは言えない状況です。

テクノロジーは進化していますが、環境整備(デザイン)は昔の考え方と変わりません。

授業法、授業設計(デザイン)も、整備されたICT環境の罠に陥ることが多く、良い意味での割り切りが難しい。

常連のお二人の他にも

「現場の先生」「研究者」「企業」「行政」「保護者」など、教育とICTに関わりのある多様な立場の方々をゲストにお迎えして、多様な視点から話を進め広げ、課題を掘り下げて、その解決策の一端でも考えていければと思います。

その中でベースに置いているのは

「日本の公教育の現場が良くなっていく事」

教育とICTの期待が高いあまりに、様々な立場の方の希望的未来予測が入り交じり、現場の教師や子ども達、授業、そこに存在する多くの課題が置き去りにされていると感じています。

スナックの中でも論点・視点の整理をつけながら、

「誰のための」

「何のための」

という部分を大切にしていきたいところです。

 

スナックというチカラを抜いた場所で、それぞれの立場で培った見識や経験を、一般的な話として持ち寄って語り合い、アーカイブする。

ここに意義と、面白みを感じます。

内なる目標は「どこまで続けられるか」

ゆるやかに頑張りすぎないように、

楽しみながら月曜の夜を迎え続けていきたいと思います。

針路に悩む

今、針路に悩んでいます。

私は、公立学校の教育ICTに長年携わってきたました。

PC教室の整備から始まり、ミレニアムプロジェクト当時の校内LAN、グループウェア、校務支援システム、学校HP、校務端末、端末管理、教育イントラ、1to1環境、ヘルプデスク、ICT支援員、etc

その他にも新設学校のICT系設計協力など、学校に存在するICTに関する殆どのモノの設計、企画、調達、整備、導入、サポートに携わってきました。

そこに関わる利害関係者とも、幅広く接してきました。

授業も見せていただきましたし、ICT支援という形で、中で関わってきました。

課題山積。

実情が分かってきました。

その原因、遠因も見えてきました。

そうして、関わりを深めるほど、視野が狭くなる自分がいます。

それではダメだと感じています。

この感覚は良いことだと思っています。


巷ではタブレット端末など、商機盛んに動いています。

同じ話を20年前、40年前にも繰り広げていたというご指摘をいただきます。

当時の書籍にも書かれていますし、色褪せない部分が多いと思います。

ICT云々だけで考えていても、課題は繰り返すだけです。

様々な事を紐解いて行くと、ICTと離れたところに行き着くのでしょう。


現在が過去と違う部分は、ICTに限らず、課題の範囲が広り、多岐に渡っている点ではないでしょうか。


私自身が感じるのは

「学習者=子ども」と

「家庭も含めた子育ての実情」

が議論の中で置き去りにされていないか?ということです。

そして「変わらないもの」

を見通すことの大切さです。

「木を見て森を見ず」ではないですが、

学校や家庭で子どもが活動する姿を見つめなければなりませんし、そこから学び、広くデザインしなければならないと、最近強く考えています。


ICTが生活の中に当たり前に存在し、触れ始める年齢はどんどん低くなっています。

あるアンケート調査によると、

1歳児の74%

2歳児の85%がスマホを使用することがあると回答し、

その内半数は習慣化している傾向が出ています。

※ママスタジアム:子どものスマートフォン利用調査

~子どものスマートフォン利用調査~


スマートフォンに限らず、

場所を問わず携帯型ゲーム機に夢中になる児童を見かけることは珍しくありません。

早々と家庭でICTに接し、暮らしています。

学校現場だけに効果的なICT活用や子どもの伸び、

課題解決を期待するには酷な状況になってしまっています。


今後も、教育に対してICTを通して関わって行くことに変わりはないと思っています。。


どういう姿を求めたいのか?

誰のため、何のためなのか?

相手は誰?

場所は何処?

手法は何?

自分はどうする?


幼稚園でのICT活用や、

ICT活用スクールの運営はそういう想いの中でカタチとなった部分です。

学校と離れたからこそ見てくることが沢山ありました。

出来ることが多い事を、園児やスクールの子ども達から学んでいます。

その他の活動をフラットに再考中です。


多重奏で考えてトライし、

将来的にはオーケストラの指揮者の様に振る舞うイメージは持っていますが、

どうすれば、そこへたどり着けるのか?

前例が無いため、恐々手探りで進んでいます。

とにかく、考えなければならない範囲が広い。

しかし、広く見ていなければ、自分も、課題の本質も見失って、遠回りになってしまいそうです。


しばらくは、悩み考え、動きながらの日々が続くことでしょう。


そう簡単ではない。

特効薬もない。


大雑把な議論の行く末

「大雑把な議論の行く末」

最近、全国系のテレビや新聞紙面、雑誌、Web媒体などで「教育ICT」に関連する話題が取り上げられる機会が増えてきました。

それだけ、世間の関心を集めているのだと、私自身は喜ばしく感じています。

そのような中、見聞きしている媒体や人によっては「情報教育」「ICT教育」「ICT利活用教育」「デジタル教育」など、様々な言葉が飛び交い、よく聞くと同じような意味合いだったり、掘り下げると異なる文脈を指していたりと、そうするうちに内容がよく掴めなくなることもあります。

先日放送された、NHKクローズアップ現代では「学びを変える?〜デジタル授業革命〜」と題して、国内(佐賀県広尾学園)と海外(韓国)など、多様な事例を交えて、現状と課題についてレポートされていました。

視聴後の感想は「?」が沢山浮かんでしまいました。

「教育とICT」の露出が増えるほど、違和感が残ることが多くなりました。

例えば、高校で情報端末を含めたICT環境整備を行い、実践を進めている事例では

・県立高校の全1年生:一人一台:Win8:半BYOD(保護者が一部負担):佐賀県

・県立高校の特定の科の生徒:一人一台:iPad:BYOD:千葉県立袖ヶ浦高校

・私立高校の特定の科の生徒:一人一台:iPad:BYOD:広尾学園高校

・私立高校の教員と一部のコースの生徒:iPad:貸与:博多高校

・私立高校の全2年生:Win8:貸与:立命館宇治高校

・私立高校の一部のコースの生徒:Win8:BYOD:佐野日大高校

などが挙げられます。

公立と私立、WinとiPad、学年、学科、コース、BYODと貸与、、、

文字情報からでさえ、導入状況や条件が個々に異なっていることが分かります。

カリキュラムや学校の方針が異なると、活用法は驚くほど違ってきます。

当然、稼働状況、課題や効果も様々です。

それらが、教育ICTの先進事例として同じ土俵で扱われる事がしばしば見受けられます。

一般の方の視点で考えると、

「学校」「ICT」「デジタル」のようなキーワドで捉えられ、

「あの学校は上手く行っているのに、なぜあそこは課題が多いの?」

「海外では効果がないという意見があった、日本でも同じではないか」

iPadは良くてWinは良くない」

「Winは良くてiPadは良くない」

「海外で成功した授業法で、日本の授業も革命が起きるかもしれない」

のような、とても「大雑把に」受け止められているのではないかと、心配になります。

個別事例から課題や効果を読み解く際には、

ICTを導入した「目的」「背景」「構築された環境」「活用法」「指導法」などの違いを整理して考え、議論しなければ、課題解決策や効果を生み出した要因を把握する事は難しくなります。

公立と私立では「目的」「背景」など大きく異なります。

公立でも「地域のICT導入の歩み」や「進学校、実業校などの校種」でも異なります。

小・中・高校でも「担任制と教科担当制」「部活の有無」「教員の年齢構成」など多くの事が異なります。

子どもたちの様相も様々です。

入試により選抜された学校か否か、でも異なります。

「活用法」「指導法」など教科によっても異なります。

地域の実情によっても異なります。

国が違えば、教育方針も、教育内容も、文化も、教員の業務内容も大きく異なります。

選挙で「教育」が争点になる国もあれば、

「一点突破主義の劇場型選挙」が実施される国もあります。

 

右も左もよく分からない創世記にありがちな大雑把な議論の時代はそろそろ終えて、

個別事例について時系列や背景を含めて紐解きながら

具体的な知見を深め、共有する時代へ歩みだしていくために、

「教育ICT」の事を四六時中考えている者としては、感じている違和感の源を整理して、望ましい議論の方向性に対する自身の考えを発信する必要性を感じています。

一部の専門家だけではなく、少なくとも社会へ発信する立場にある教育関連の記者の方々にも認識して頂き、

切り口鋭い問題提起を通して

「より良い授業」「より良い学び」「子どもたちのより良い未来」に繋がるような建設的な議論を促して欲しいところです。

このまま「大雑把な議論」を続けていても、いつの時代も同じ課題を持ち続け、多くのコストを浪費することになりかねません。

ICTを教育に取り入れる事は、ここ数年の話ではなく、ずっと昔から脈々と続けられてきた事です。

1986年に出版された「マイコンクラスルーム 未来の教室 CAI教育への挑戦」(中山和彦・東原義訓 著)の中では、

「高度情報化社会においては、これまでの工業社会の下とは違った人間が要求されている。画一的な人間ではなく、情報についての理解とそれを自分なりに処理する事のできる個性的な人間である。学校はそれに対し、どのように対処したらよいのであろうか。」と提起されていました。

28年も前に、今の議論と同様の事が行われていたようなのです。

なぜ、同じ課題を抱え続けているのか?

目新しい技術や先進事例が話題を集めるのは当然ですが、

その奥底にある「未だ解決されていない課題」に対して、広く議論できる時代の到来を望んでいます。

 

(追伸)

最近、Web上に「スナック・ネル」という一風変わった空間をオープンしました。

毎週月曜の22:00〜23:00に常連のお客様をお迎えして、教育とICTについてビデオチャットGoogleハングアウト)を利用して議論し、その様子をYouTubeでオンエアーしています。

今週の様子は

スナック・ネル 第2回営業[20140908] - YouTube

より、どなたでもご視聴いただけます。

ご意見等を書き込むタイムラインは

FaceBookグループ「スナック・ネル」の中に開設しています。

「教育とICTを愛する方」であれば、どなたでもご参加頂けます。

方々に散らばってしまっている課題や知見を持ち寄って、

フランクに話し、考え合える場になればとスタートしました。

ゆるやかに始めていますので、あまり多くを期待せず、長い目でお付き合いください。

こちらの方も、よろしくお願いいたします。